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Friday, July 30, 2021

超狭い住宅に申し込み殺到! モノを持たない「ミレニアル世代」と「Z世代」がマーケティングを変える理由 - ITmedia

 企業のマーケティング活動において、世代別動向と特性を把握しておくことは、全ての業種において必要です。現在、各世代の中で最も勢いがあり、マーケティングに大きな影響を与えているのが「ミレニアル世代」と「Z世代」です。彼らはデジタルネイティブ世代であり、それ以前の世代とは全く異なる価値観を持っています。

価値観や消費行動にどんな特徴があるのか(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージ)

 今回は、ミレニアル世代とZ世代の価値観変化をあらためて整理します。そして、価値観が如実に表れている日本の住環境に焦点を当て、消費環境の今を読み解きます。

 消費トレンドの変化を約30年追い続けてきたムガマエ株式会社代表の経営コンサルタント、岩崎剛幸が分析していきます。

ミレニアル世代とジェネレーションZ世代とは

 1981〜96年までに生まれた人口層をミレニアル世代(またはジェネレーションY)、97年以降に生まれた人口層をポストミレニアル世代(またはジェネレーションZ)と呼んでいます(本文では01年までと定義)。日本ではミレニアル世代を「ゆとり世代」と呼ぶこともありますが、ここでは米国の呼称に合わせます。

 両世代は米国でも日本でも徐々に存在感を増しています。マーケティングだけでなく、政治や企業、社会に大きな変化をもたらす世代と見られています。

 では、米国や日本では各世代と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。

 まずは、ジェトロ(日本貿易振興機構)が発表したレポート「ニューヨークだより」などから読み解いていきます。

各世代の特徴は?

 米国においてこれまでの世代と圧倒的に異なるのはその人口ボリュームです。

 ミレニアル世代は5600万人いて、米国労働力人口の35%を占めます。Z世代まで含めると40%と圧倒的な構成比です。日本では両世代合計で労働力人口の26%となっており、米国よりは見劣りします。しかし、今では社会の中心を占める世代として存在感を増しています。

 両国においてそれまでの世代と最も違う点は、「デジタルネイティブ世代」であること。生まれながらにしてデジタル機器に触れ、日常的に利用しています。それまでの世代が「わざわざ覚えた」のに対して、この世代は遊びの延長で軽やかに使いこなしています。「DX」などと言わなくてもすでに分かっているのです。

 ミレニアル世代以降にとって、世の中は常に大きく変化しており、社会課題と向き合わざるを得ない環境の中を過ごしてきました。また、モノからコトを重視する社会変化を目の当たりにしてきた世代です。物は充足しているので、現在は心の満足を得る時代だと実感しています。

求めるのは「心の豊かさ」

 内閣府が継続して調査している「国民生活に関する世論調査」では、「これからは心の豊かさか、まだ物の豊かさか」という問いに対して、62%以上の人が心の豊かさを求めるとしています。

 ミレニアル世代では53%、Z世代では56%と他の年代に比べると物の豊かさを求める面があるものの、それでも半数以上がすでに心の豊かさを求めるようになっています。前回調査と比較すると、Z世代の心の豊かさを求める割合が高まっています。若いうちから、物では豊かさを実感できないことを理解しているのです。

国民生活に関する世論調査 これからは心の豊かさか、まだ物の豊かさか

ミレニアルとZ世代はシンプル族である

 以前、消費社会研究家の三浦展さん(カルチャースタディーズ研究所主宰)に紹介してもらった本に、「LOHAS」という言葉を世の中に知らしめた、『カルチュラル・クリエイティブス』(ポール・レイ、シェリー・アンダーソン著)があります。同書によって初めて、健康的で環境によいライフスタイルである「Lifestyle Of Health and Sustainability」、すなわちLOHASが重要視され始めました。

 この価値観をミレニアル世代以降が特に持ち合わせていることを三浦さんは『シンプル族の反乱』(KKベストセラーズ)の中で指摘しました。それまでの年代に比べて、限りなくシンプルなライフスタイルを求める人たちということで、三浦さんは「シンプル族」と名付けたのです。

 シンプル族の特徴は、その前の世代であるX世代=バブル族と比較すると明らかになります。

バブル族とシンプル族の違い

 シンプル族のライフスタイルには、「無駄な物を持ちたくない」というエコ志向がベースにあります。なので、車よりは自転車、自転車よりは電動キックスケーターを利用します。環境にも健康にもいい物であればあるほど、購入意欲が増します。何より、「長く使っても飽きないもの」や「シンプルなもの」を好みます。

 ベーシックな物に価値を見出しているため、ファッションもユニクロや無印良品などを利用し、できるだけ無駄な物を持たない生活スタイルを望んでいます。

 カッコよさやかわいさといった基準がミレニアル世代以降では大きく変わり始めています。筆者のようなバブル族のおじさんの感覚が若者に受けないのは当たり前なのです。

なぜ狭い部屋を好むのか

 そんなシンプル族に人気の、面白い不動産会社があります。「EARLY AGE」(アールエイジ、東京都港区)です。狭小型物件開発の元祖とも言える同社が扱うのは、狭いと10平米以下、四畳半程度の部屋です。そのようなマンションを、恵比寿、中目黒、代々木上原、神楽坂といった都内の人気エリアに次々と展開しています。

狭い部屋がウケている

 同物件には明確な特徴があります。一つは家賃です。例えば、代々木上原周辺は人気の居住エリアとなっており、駅徒歩4分で1R・1Kの物件だと、家賃の相場は12万〜13万円です。一方、同社の扱う物件は、相場より安価です。

 もう一つの特徴がシンプルな部屋の作りです。一例ですが、小さな部屋の中には、バスとトイレ、洗面所と流し台を兼ねたシンクがあり、下に洗濯機がはめ込まれています。驚くほどコンパクトな間取りですが、どの物件も非常に人気があります。セカンドルームとしてではなく、本宅としての利用がほとんどです。

 こんな狭い部屋で実際に暮らしていけるのかと不思議に思う人もいるでしょう。しかし、利用者はこの広さ、この機能で「十分」なのです。ミレニアルとZ世代にとっては、スマホさえあれば生きていけるからです。

お金がないから狭い部屋に住むワケではない

 以前、同社のマンションに引っ越しをしてきた大手IT会社の30代女性管理職に話を聞いたことがあります。彼女は都心から少し離れたエリアから、中目黒の物件に引っ越してきたところでした。「このような小さな部屋で足りるのですか?」と私が聞くと、彼女はこう答えました。

 「洋服は定期的にメルカリで買って、売ってまた買うを繰り返すので、タンスは必要ありません。だからその分のスペースがいらないのです。普段は仕事で忙しいので広い部屋は不要です。食事は周辺にある飲食店かコンビニで十分。だから冷蔵庫はなくてもいいし、キッチンもほとんど使いません。ムダを極力減らした部屋だから、私は気に入って引越してきたんです」

 お金がないから小さい部屋に引っ越すという昔の大学生にありがちな「四畳半暮らし」ではありません。

 お金も肩書も余裕もあるのですが、「モノを持たないシンプル族」だから小さな部屋がいいのです。部屋に冷蔵庫がなくても、コンビニでいい。立派な洗濯機がなくてもコインランドリーでいい。キッチンが小さくても外食でいい。部屋に仕事や勉強スペースがなくても、ネット環境のある近所のカフェでいい。友達を呼べるスペースがなくても外で会えばいい。これがこの世代のライフスタイルであり、だからこそアールエイジの物件が人気になるのです。

住環境の常識が違う

 一般的な暮らしに必要とされる居住面積水準はどの程度なのでしょうか。国土交通省の「住生活基本計画」を分析します。

どのくらいの広さの住居を求めているのか

 同計画は、居住面積水準のガイドラインを定めています。そこには、世帯人数ごとに健康で文化的な住生活を営む基礎として、必要不可欠な住宅の面積などが示されています。

 アールエイジの作るスーパーコンパクトな部屋は単身世帯の基準よりもかなり小さくなります。しかし、ここに住みたい人はもともと一般的な面積水準を求めていないのです。同社は世代特性を踏まえ、嗜好の変化に合わせた部屋をいち早く開発したからこそ、シンプル族に支持されてきたのです。その先見性こそが同社の優位性につながっています。

 ミレニアル世代とZ世代の求める住まいは、国の考える住まいのカタチを越えて、もっと小さく、もっとシンプルなものを潜在的に求めていたのです。それがアールエイジのスーパーコンパクト住宅で引き出されたと言えます。住まいだけでもこれだけの変化が起きているのですから、この世代の価値観はそれ以前の世代のものとはまるっきり違うという意味がお分かりいただけるでしょう。

 世界の人口78億人のうち、ミレニアル世代は22.3%の17億4000万人、Z世代は7.7%の6億人、Z世代予備軍(15〜18歳)も7.9%の6億1000万人。予備軍まで含めた両世代の占める割合は37.9%、29.5億人です。これからの世界の中心は間違いなくこの世代であり、世の中のパワーの源です。

 だからこそこの世代がどのような価値観で動くのか、何を大切にする世代なのかをもっと掘り下げて分析していくことは、あらゆる企業にとって重要です。

 モノであふれた時代から、モノを持たない時代に世の中は突入していきます。

 この時代にどのようにモノやサービスを買ってもらえるか。

 両世代の研究を通じて、商売のやり方を抜本的に変えていく必要があります。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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