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Monday, June 28, 2021

東京五輪の真の目的は何? スポーツを「苦しむもの」から「楽しむもの」に変えることと専門家が指摘 - goo.ne.jp

東京五輪の真の目的は何? スポーツを「苦しむもの」から「楽しむもの」に変えることと専門家が指摘

東京五輪は開幕が迫るが課題は山積している(写真/朝日新聞社)

(AERA dot.)

 新型コロナウイルスの影響で東京五輪の開催に賛否の声が聞かれる今、私たちはオリンピックの歴史から何を学ぶべきなのだろう。小中学生向け月刊誌「ジュニアエラ」7月号では、雑誌のキャラクター、コビンとコビンナがスポーツ文化評論家の玉木正之さんに聞いた。

*  *  *
――古代オリンピックは戦争を中断してまで行われたとか。本当に平和の祭典だね。

 そもそもスポーツは、とても楽しくて、心からやりたいと思えるもの。だから、戦争をやめて、スポーツをやろうというルールにみんなが賛成したんだよね。でも、残念ながら、日本ではスポーツは楽しむものと言い切れない雰囲気がある。実は、それを変えることが、今回の東京オリンピック・パラリンピックの目的でもあるんだ。

――そうなの? 東京大会の目的は、「東日本大震災からの復興」って聞いたよ。「新型コロナウイルスに打ち勝った証しにする」とも言ってるよね。

 それはどちらも後づけの理由。だって、そもそも東京大会の誘致活動が始まったのは2007年。東日本大震災の4年前だからね。

――じゃあ、東京大会の目的って何なの?

 日本のスポーツのあり方を、未来に向けて発展するように見直すことだよ。スポーツは本来、楽しむものなのに、日本では教育の一環の「体育」で、苦しくても我慢してやらなきゃいけないものとされてきた。それが、暴力的な指導や長時間の練習といった「ブラック部活」など、さまざまな問題の原因にもなっている。

――それは解決しなきゃいけないね。

 それには、法律や行政のあり方から変える必要がある。前回の東京大会の前、1961年にできたスポーツ振興法も、スポーツは「心身の健全な発達を図るため」とされているからね。それに、当時は障害者スポーツという考え方もなかったから、スポーツは今の文部科学省、障害者スポーツは今の厚生労働省の管轄とばらばらで、連携が取りにくいといった問題もあった。東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、そんな問題を一気に解決しようと考えたんだ。実際に、東京大会の実現に向けて、スポーツ基本法ができたり、スポーツ庁が設置されたり、体育の日がスポーツの日と名称が変わったり、いろいろな変化が起きている。そういう意味で、もしも東京大会が中止になっても、目的はある程度達成できたといえるんじゃないかな。

――オリンピックでは悲しい出来事もいろいろ起きたよね。ボイコットで出場できなかった選手がかわいそう。オリンピックに政治を持ち込まないでほしいわ。

 気持ちはわかるけど、難しい問題でもあるんだ。昨年、テニスの大坂なおみ選手が人種差別に抗議するマスクをつけていたのをどう思った?

――素敵だと思ったわ! 勇気がいることだし、人種差別はいけないことだもの!

 でも、もしもオリンピックで大坂選手が同じことをしたら、罰せられるかもしれない。オリンピックでは政治的な行為は禁止されているからね。過去に人種差別に抗議したアメリカの選手は大会から追放されたでしょ? でも、それで本当にいいのかな。日本ではルールを「守る」ことがスポーツマンシップだと考える人が多い。でも、本当はルールを「つくる」ことこそがスポーツマンシップなんじゃないかな。スポーツは、殴り合いや取っ組み合い、球の奪い合いのルールをみんなで話し合って考えることで生まれたものなんだし、オリンピックは、敵対していた国同士が話し合って、「戦争をやめて大会を開こう」とルールを決めることで生まれたものなんだから。

――なるほど!

 東京大会を開くかどうかも、政治家だけで決めるのではなく、選手自身や国民の意見をもっと聞くべきだったと僕は思う。今回の大会誘致のとき、福島第一原発事故の影響を心配する意見に対し、当時の安倍晋三首相が「アンダーコントロール(制御下にある)」と発言した。事実と違うのではといわれたけど、誘致が成功したから黙殺された。そんな経緯があるから、新型コロナウイルスの流行が収まらない今、「中止すべき」という声も黙殺されているように疑問を持たれてしまう。もしも、開催して大会が盛り上がって終わったとしても、「ほら、中止すべきではなかったでしょう?」と終わらせてはいけない。なぜ、開催すべきと考えたのか議論してこそ、次につながるよね。

 そして、ぜひ、選手も観客も、いろいろな人が知恵を出し合って、これからのオリンピックをどうすべきかを話し合ってほしい。コビンとコビンナ、何かいい案はない?

――陸上はこの国、水泳はこの国、サッカーやバレーなどの球技はこの国と、開催地をいくつかに分けたらどうかな?

 なるほど! 一つひとつの規模が小さくなれば、大会を開きやすくなるかもしれないね。
クを一緒にやったらどうかしら? 走り高跳びで、オリンピックの選手が跳んだすぐ後に、パラリンピックの片足の選手が跳ぶとか。

 それもいいね! みんなで知恵を出し合ったら、もっとワクワクする大会になる。ぜひ、みんなの意見も聞かせてね!

※月刊ジュニアエラ 2021年7月号より

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