
なんといびつな食の風景だろう。食料自給率がカロリーベースで過去最低の37%(2020年度)しかない国で、毎年600万トンもの食べ物が捨てられる(18年度推計)。国連の食料援助量の1・4倍に相当する。飢えや栄養不足で世界では8億人近くが苦しんでいるというのに。
600万トンといえば、10トントラック換算で毎日1640台分の廃棄量だ。1人当たりの食品ロス量は年間47キロで米の消費量に近い。廃棄食品の処理費用は年2兆1000億円に上る。子どもの7人に1人が貧困にあえぎ、新型コロナウイルス禍で失業者が弁当や食材の配布に列をなす中、国内でも食の偏在が際立つ。
日本と世界のこうした食料事情の現実と矛盾を直視しよう。家庭や事業所で、生産・流通・販売の各段階で何ができ、何をすべきかを当事者意識を持って考えよう。
同月間は、食品ロス削減推進法の19年10月1日施行に合わせて開始。消費者庁、農水省、環境省が連携し、多彩な仕掛けや事例紹介で国民運動を呼び掛ける。販売期限の迫った商品を選ぶ「てまえどり」、食べ残しを防ぐ持ち帰りバッグの携帯、食材を無駄にしないレシピの活用、フードバンクへの支援など身近にできることからやってみよう。
食品流通では、賞味期限の3分の1までに小売店に納品する商慣習「3分の1ルール」の緩和を積極的に広めたい。また、規格外の野菜や、賞味期限が近い食品の活用は産地などの支援につながる。
コロナ禍で飲食店や生産者を支えつつ、食品ロスを減らす取り組みにも注目したい。売り先が途絶えた農産物を買い支える「応援消費」、飲食店のテークアウト販売の利用などを定着させたい。
政府は、30年度までに2000年度比で食品ロスを半減させ489万トンにする目標を掲げる。近年600万トン台で推移し、このままでは達成は危うい。「目標達成には、食品ロスの約半分を占める家庭から行動変容を起こすことが欠かせない」(消費者庁食品ロス削減推進室)。徳島県の実証事業では、家庭で食品廃棄量を記録し、削減に取り組むことで食品ロスを約4割減らせることが確かめられた。
食卓は産地とつながっている。買うことは、最も身近な応援だ。食べることは、誰かを支えることだ。賢い消費は世界を変える力を持つ。だから捨ててはもったいない。
からの記事と詳細 ( 食品ロス削減月間 世界を変える賢い消費 - 日本農業新聞 )
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