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Friday, July 2, 2021

<社説>続く人口減少 社会の構造を変えねば - 東京新聞

 二〇二〇年国勢調査の速報値によると、日本の総人口は一五年調査から二回連続で減少し、本格的な人口減少社会に突入したことが鮮明となった。一世紀にわたる調査史上初めて。暮らしの豊かさを守るには、社会、経済全般の大胆な構造変革が待ったなしだ。

 二〇年十月一日の総人口は速報値で約一億二千六百二十三万人。一五年の前回比で八十七万人減った。和歌山県や東京都世田谷区の規模の人口がほぼ消滅した。

 総人口は前回、一九二〇年の調査開始以来初めて減った。今回の減少率は約0・7%で、前回の0・8%(九十六万人)より鈍化したが、外国人が増えた社会増が主な要因で、少子化による自然減はそれを上回る。

 コロナ禍の影響もあり、出生数は昨年、約八十四万人と戦後最少を更新した。今年は八十万人以下との厳しい予測もある。

 人口減少カーブを少しでも緩やかにするには、若い世代が安心して働き、結婚、出産できる環境づくりが必要だ。官民挙げた育児支援策の充実などにより、人口を増やした市町村が約三百もある。

 人口減の中で経済成長をある程度、維持するには、成長産業に働き手を集中させたり、能力に応じて働く場を移動しやすくする労働力の流動化が重要だ。職業教育・訓練の拡充も必要となる。

 同時に、女性や高齢者にも正規労働者として働いてもらうため、時短勤務やテレワークを積極的に広げるべきだろう。

 正規労働者が増え、税や社会保険料収入が確保できれば、約千二百兆円もの借金がある国の財政再建や、医療、年金、介護など社会保障制度の維持にもつながる。

 定住外国人の増加が人口減の歯止めになっていることを考えれば途上国の若者らを安価な労働力としか事実上みなしていない技能実習、特定技能制度を抜本的に見直すことも避けられまい。

 四十七都道府県の八割で人口が減り、首都圏や愛知県などで増加する二極化も顕著になった。都市部の高齢化と地方の過疎化は、いずれも行政負担を重くする。テレワークなどの働き方改革で地方への適度な人口分散を進めたい。

 地方の側も、広域連携による行政の効率化や、居住区域や公共施設を集約する市街地のコンパクト化など、住みやすい街づくりに知恵を絞るべきである。

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